俺様婚約者~お見合いからの始まり~
「ちょっと、悠斗…!」

菜緒子さんが呼び掛けているが今回は彼は振り返らない。

私を引っ張りずんずん進む。

エレベーターの前で待機していた支配人に一言、「すまない」と詫びてそのままエレベーターに乗り込んだ。

隣の悠斗をそっと見上げる。

不機嫌そうに黙り込んでいる顔をじっと見つめる。

…うん、やっぱりイイ男だわ。

容姿端麗、とはこの人の為にある言葉の様な気がしてくる。

ふーん、二十七才なんだ。

結構年上だったのね。

だけど、だったら尚更、菜緒子さんの言う通り私なんて相手にしなきゃいいのに。

彼の周りには菜緒子さんの様な魅惑的な大人の女が溢れている筈なのに。

…変なヤツ…。

そう思っているとふと彼が突然私を見た。

パチリと目が合いドキリとする。

私は誤魔化す様に彼から視線を外しガラス張りのエレベーターから吹き抜けのロビーを見下ろした。

そこに菜緒子さんの姿はもうなかった。

…きっと、彼女は悠斗の事が好きなんだわ。悠斗もそれに気付いている…。

どうしてなのか、胸の奥がザワザワしていた。


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