それはたった一瞬の、
父さんの目が不自然なぐらい、何度もゆっくりと瞬きをする。
「どうして処分しようとするの?」
涙声にならないように必死に奥歯を噛みしめながら言うと、父さんは遠くを見るような虚ろな目で言った。
遠い遠い記憶を掘り起こして、探るように。
「母さんがいなくなったからだよ」
それはもう埋まったと思っていたはずの傷。
染みひとつない真っ白な部屋で、酸素マスク越しの呼吸が弱っていくのを見ていることしかできなかったあの日。
傷は、消えてなんていなかった。