それはたった一瞬の、
私が思っていたよりもずっと、父さんは母さんのことが好きだったらしい。
「母さんが俺の文章を待ってくれたから、俺は書くことができたんだ」
ファンレターを読みながら笑う母さんは、本当に自分のことのようにそれを喜んでいた。
だから今まで私も、父さんが作家だと気付くことが無かったんだ。
「母さんがいなくなってしまったら、俺が原稿を書く意味なんてない」
あの人だけが支えだったと、父さんが微笑む。
今もそこにある母さんの残像を追いかけるように。
でも私は笑えない。
「ふざけんなよ、クソ親父」