それはたった一瞬の、


父さんが目をパチクリさせる。
私はそんな父さんを睨みつける。

幻想だとか理想だとか思い出だとか、そんなものいらない。

少なくとも、今の父さんには。


「ふざけんな!母さんだけが父さんの文章を待ってるわけじゃない!」

ファンレターは無くなったわけじゃない。

父さんが何も書かなくなった今だって、何通も心のこもった手紙が送られてくる。

あれは母さん宛の手紙じゃない、父さんに宛てたものだ。

「ファンレター、いつも来てるよ!父さんにもっと書いて欲しいって、いっぱい父さんの作品が読みたいって人がいるんだよ!」


それを知らずに母さんだけが読者だと思っている父さんが、どうしようもなく腹立たしかった。

私のことを、読者と認めてくれないことだって。


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