それはたった一瞬の、
沙霧が苦々しい顔で鍋を睨みつける。
「ひっでぇ話だ。こいつに味付け任せたら調味料どばどば入れやがってよぉ…」
栄養ドリンクを差し出したくなるほど疲れと哀愁が滲むその顔が、この状況の凄まじさを表している。
「だって、沙霧にどれぐらい入れたらいいか聞いたら、適当って言ったかも!だから適当に入れたのは間違いじゃないかも!」
「大間違いだよバカヤロー」
「う、うぅ…っ」
いつもより釧奈の反論に歯切れが無いのは、自分の非を少なからず認めているからだろう。
眉間をつまむように指を当てた沙霧が、大きな大きなため息をつく。
確かにショックだろうな…。