それはたった一瞬の、

静かな幕開け



ふわり、ふわり、生ぬるい空間。

ここはどこだったっけな。
私はいつからここにいたんだろう。


生まれた時からここにいるような気がする。
ついさっきここにやってきたような気がする。

ここで私は、何をしたいんだろう。


『藍火』

ぬくぬく、気持ちがいい。
母さんの声だ。

『作家っていうのはね…』

母さん、それはもう何度も聞いたよ。

母さんはたくさんの人に好かれるより、少しの人の中に長く残る話を書きたいんでしょう?


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