シャボンの国 -the land of soap bubbles-
心臓が強く鷲掴みにされる感覚に陥って、もうカイルの顔を見る事すら出来なかった。




帰らせてあげないと。



帰らないで。



解放してあげないと。



ずっと傍に居てよ。



―――一人になんてしないでよ。





交錯する思いは複雑に絡み合い、だけど目の前の存在に縋りついてしまいたくなる。




「…あんまり、からかってたら…、願い事してあげないよ…?」




冗談交じりに零した本音。




「いや、もう本当すみません。何かお願い事してもらわないと困りますから」




ケラケラと笑いながら言い返したカイルの言葉に花音の胸は静かに痛んだ。






―――ごめんね、カイル。



やっぱり君を解放してあげなきゃいけないんだよね。









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