恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「いー、何か!」


「陽妃がちゅらかーぎ(かわいい)だからって、手ぃー出すなよ」


「……」


悠真がじーっとあたしを見つめて来る。


「里菜よー、冗談きついー」


そして、次第に顔を赤くして、ぶっきらぼうな口調で里菜に言い返した。


「うんぐとぅ(こんな)アバサー、こっちが無理だしよー」


「……はあ?」


あたしはムッとして悠真を睨んだ。


「ちょっと、今、アバサーって言った?」


確かに。


島の言葉はフランス語みたいで、いまいち分からない。


けど、アバサーくらいは知っている。


「アバサーって言ったでしょ」


それって……。


あたしがハリセンボンみたいにトゲトゲしてるってこと?


「や……やさ!(そうだ!)」


ヤバ、とでも言いたげに悠真があからさまに目を反らし、向こうで笑っている里菜に言った。


「わんがうんくどぅアバサー、相手にするかね! わんやぁ知的ないきが(男)やっさー!」


フフン、と腕を組み偉そうにふんぞり返るジェスチャーをした悠真を、


「やぁーみ?(はあー?)」


里菜はお腹を抱えてげらげらと笑い飛ばした。


「笑わさんけー! 中間テストでビリだったの、誰か!」


ビリ?


「かっ、かしまさい!(うるさい!)へーくはーれー! (早く行け!)」


「ウーウー!(はいはい)」


じゃあねー、と手を振って里菜が走り去ると、


「だー、しむさくとぅ(要らないこと)言いやがってさぁー」


悠真はブツブツ言いながら赤くなった顔を両手で覆って背中を丸めてしまった。


そして、そのままふらふらとよろめきながら歩いて行く。


「あ、待ってよ」


あたしが呼び止めているのにも気付かない様子だ。
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