恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「ねえ! ビリだったの?」


情けないオーラが漂う後ろ姿に大きな声で聞くと、


「大きな声であびるな! あびらんけ!」


弾かれたように振り向いた悠真が突進するような勢いで引き返して来た。


「たまたまやっさー! 腹の具合が悪かったんやっさ!」


ぶっきらぼうに吐き捨て、「行くぞ」とまたひとりでスタスタ歩いて行ってしまう。


「あ、ちょっと! 待ってよ、待ってったら!」


「何か! やっさ、たまたまやっさ、言っとるば!」


立ち止まり振り向いた悠真を見て、つい、小さく吹き出してしまった。


そんなあたしを見て、


「ぬー!(なに)」


悠真は明らかに不機嫌になり仏頂面になった。


「ぬー笑っちょるんやっさー」


「だって」


こんなに分かりやすい男の子と知り合ったのは初めてで。


なんだか無性に可笑しくて。


テストでビリになった事を笑ったわけじゃない。


感情を全身で表すような人と知り合ったのが初めてで、新鮮で。


「待ってよ。あたしね」


ああ、居るものなんだな、って。


思った。


“嘘をつかない”んじゃなくて。


“嘘がつけない”男の子っているんだな、って。


「あたし、こっちに来てまだ間も無くて」


「そんな事は分かっちょる」


「与那星島のこともまだ良く分かんないし。まして、石垣島はもっと分かんないの」


「それも分かっちょるさ」


そのぶっきらぼうな仕草や口調は、もしかしたら照れ隠しじゃないかと思う。


なんとなくだけど。


そう思う。


でも。


いるんだ。
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