恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「え? どこ? ニライ……なんとかってどこ? 沖縄にあるところ?」


いつ帰ってくるの? 、と首を傾げながら顔を覗き込むと、


「けーって来ねーらんよ」


悠真は肩をすくめて微かに微笑んだ。


「そんなに遠いの、ニライなんとかっていうところ。東京より北の方とか?」


「あー、もっともっとずーっと遠さんよ」


目の前に広がる東シナ海水面の眩しさに、悠真が目を細める。


「遠さんよ」


まるでガラスの粉をまき散らしたように、途方もなく細かく、海面が煌めく。


「それってどこなの? 日本じゃないの? 外国? 留学してるとか?」


マシンガンのように質問すると、悠真は海の遥か彼方を指さして、


「ニライカナイやぁ、この海のずっと向こうにあるんやさ」


一瞬、泣きそうな顔をしたあと声を上ずらせた。


「常世の国(とこよのくに)やさ」


金色に光る、空と雲。


「トコヨノクニ、って?」


一面輝いた海がキラキラと霞んでいるように見える。


「ニライカナイやぁ……」


海の遥か彼方にある、常世の国。


聖なるところで、他界。


海の向こう側にあると言われている理想郷だ、と悠真が教えてくれた時。


その先の話を聞く前に、あたしはそれに気づき、うつむくしかなかった。


「神様が幸福をもたらしてくれる場所なんだしよ」


亮介くんはもう、この世にはいないひとなんだ。


もう……。


「陽妃」


「……うん」


「ニライカナイはさ」


「……ん」


喉の辺りが苦しいのか、胸が苦しいのか、分からない。


うまく返事をできないどころか、声の出し方も忘れてしまいそうなほど、息がつまる。

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