恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
与那星島の風は、静かだった。


「悠真」


あたしは、笑顔の悠真に笑顔を返すことができなかった。


「あの……」


教えてもらいたい事があるのに、その先の言葉が見つけられずついには口をつぐみ、かといって乗車することもできずに悠真を見つめながら突っ立っていると、


「ねぇねぇ、乗らねーらんぬみ?(乗らないの?)」


運転手のおじさんが優しい声で聞いてきた。


「えっ」


「暗くなってきたよ。ヤーぬ人(家の人)が心配してなおすよ」


「え? あ……すみません」


おじさんが言ったことの意味を半分理解できないまま、おずおずとステップに一段上る。


でも、やっぱり聞いてみたくて。


たぶん、どこかしら同じ痛みを知っている悠真に教えて欲しくて。


タン、と足を止める。


「あのっ」


「いー? 何かね」


運転手のおじさんとハタと目が合う。


「ごめんなさい。1分だけ待ってもらってもいいですか?」


すると、おじさんはガランとした空き箱のような車内を振り返り見て、


「いいさ。見てぬ通り、不景気でさ」


とくすぐったそうに笑った。


「どうせ、ねぇねぇしか乗らねーらんみたいやっさーからさ」


「すみません、ありがとうございます」


会釈をして、あたしはステップの上から悠真に聞いた。


「どうしたらいいと思う?」


「何をさ?」


自転車を支えながら、悠真が首を傾げる。


「あたしも悠真と同じなんだ。一方的に決めつけて、勝手に頭にきて、カッとなって」


悠真が自転車のストッパーを掛けて、近づいてくる。

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