恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
誰も、運命にやぁ逆らえねーらんのさ。


誰かを想うことや、想わりゆんことや、カフー(幸せ)ばかりじゃねーらん。


やしが。


やーたちは若い。


何度失敗しても、何度もやり直しがきく歳やっさーからね。


お迎えを待つだけのオバァと違うしよ。


怖がることやぁねーらんよ。


ただ。


「陽妃があの子を必要だと思うのなら、迎えに行って来い」


おばあの少しくすんだ黒目に、まんまるのお月様が映り込んでくるくる輝く。


「美波が泣いたんや、海斗が言ってしまったからだしよ。美波や本当のことを知ってしまったのさ」


「……本当のこと、って?」


聞いたあと、あたしはごくっと唾を飲み込んだ。


「それやオバァが言うことじゃないさぁ。海斗に聞け」


「なに、それ。どういう意味」


「オバァからや言えねーらんよ」


意味深なニュアンスの目で、おばあが見つめてくる。


「陽妃よ。やー、分かっちょるんやんにかみ?(分かってるんじゃないのか?)」


「な……何よ。何が言いたいの、おばあ」


時々、おばあが怖くなる。


「くぬ島に来てから、毎日一緒におったんやっさーから。陽妃と海斗や」


おばあが目をギロリと輝かせる。


「分かっちょるんやんにかみ?」


ほら、こんなふうに。


人の心の中を透視するみたいに。


きっと、おばあにはお見通しなんだ。


あたしの考えていることくらい。


「陽妃ぃ」


「なっ……なにっ」


「やーはフラー(ばか)じゃねーらん。もう、気付いていたんじゃないのか?」


「……だから、何を」


「海斗の正体をさ」


「……」


声が大きな塊になって喉に詰まった。

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