恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「はっさ……エー! 何でかー?」


おばあの家に行くと、異常なほどの泣き声が聞こえたのか中から飛び出して来た美波ちゃんが、あたしを見るなり、


「ねぇねぇが泣いちょるば! エー、な……何でかぁー……」



うわあー、と両手で目を覆い泣き出してしまった。


――なあ、陽妃ちゃん。あヌ子……海斗や何で


「嫌さぁー……誰か……ねぇねぇを泣かせたの、だ、誰かぁ……何で……泣いてるの……ねぇねぇーっ」


――浜なんかに行ったのかね?


ごめんね、美波ちゃん。


きっと、あたしのせい。


絶対、あたしのせい。


――海斗と陽妃ちゃん、よく一緒に浜に行っちょるよね?


あたしが、あんなこと言ったから。


だから、きっと。


海斗は浜に行ったんだよ。


――あヌ浜にや、何があるの?


――あヌ子、何をしようとして、浜を歩いていたのか知らんかみ?


一緒にタイムカプセル埋めに行こう、なんて言っちゃったから。


海斗は浜に行ったんだと思う。


台風が来る前に、って。


海斗は浜に行っちゃったんだよ、きっと。


あのブイを台風から守ろうとして。


――陽妃ちゃん、何か知らんかね?


海斗は、あたしの約束を守ろうとしてくれたんだよ。


――海斗さ、こんくらいの大きなブイを持っていたんだってさ


台風からブイを守ろうとして、浜に行ったんだよ。


きっと。


だから。


こんなことになってしまったのは……。


――海斗さ……ブイを大切そうに抱きしめて、浜を歩いていたんだってさ


あたしの、せいだ。













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