恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
海斗の目が、あたしは怖くなった。


でも、感情が溢れて止まらなかった。


「人はね、簡単に人を捨てることができるの! 分かる?」


そんな目で、あたしを見ないで。


「大切な人のことも、簡単に捨てる生き物なの! 人間は!」


大我が、あたしを捨てたみたいに。


「ゴミみたいに捨てるんだよ! 分かる?」


ひかりが、あたしを簡単に裏切ったように。


「そんな人間を、海斗は信じられる? あたしはもう、信じられない!」


空が薄暗くなり始めていた。


それでも、海斗の目はまばゆいほど輝いていて。


悔しくて、悔しくて、あたしはギリギリ奥歯を噛んだ。


涙で目が霞む。


「……陽妃」


海斗があたしの頬にそーっと、触れた。


その手がつめたくて、ひんやりしていて、あたしの体が硬直した。


ぽつりと落ちた涙が、海斗の手の甲ではじけた。


「なんくるないさあ、陽妃」


海斗の声があまりにも優し過ぎて、あたしはボロボロ涙を流しながら顔を上げた。


海斗は笑っていた。


あたしが酷い事を言ったのに、それは海斗には絶対言っちゃいけないことだったのに。


それを知るのはまだ先のことだった。


「陽妃の言った通りかもしれないけどさあ。でもさ、そんな人間だけじゃないよー」


海斗の親指があたしの涙をすくいとった。


「だからさあ、なんくるないさー。約束するよ。おれは裏切らん」


「約束?」


「そうよ。どんなことがあっても、おれが陽妃のそばにいるさあ」
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