恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
だからさあ、と話し続けようとする海斗の手を、そっと掴んだ。


海斗が目を丸くした。


「なんで?」


海斗の目の中に映るあたしは泣いていて、不細工極まりなかった。


「あたしは昨日この島へ来たばかりなのに。それなのに、なんで……」


涙で声までかすれてしまった。


「なんで……海斗はあたしに、そんなに優しいの?」


なんでそんなに、親切にしてくれるの?


お隣さんになったから?


あたしが東京から来たから?


島の人間じゃなくて、珍しいから?


昔から顔見知りでも何でもないのに、あたしの方が年上なのに。


「なんで、海斗はあたしに、優しいの?」


海斗の右の目尻に、小さな小さな泣きぼくろを見つけた。


海斗が笑った。


「それは、わからん。でもさあ、たぶんだけどね。初めて陽妃を見た時、似てるうと思ったのよね」


似てる?


「むかあーしのおれと同じ目してたからさあ」


その時、不意に感じた。


もしかしたら、海斗も、悲しい出来事に直面したことがあるんじゃないか、って。


綺麗な黒真珠が、一瞬、輝きを失ったように陰ったから。


「陽妃」


「……え?」


海斗の顔がゆっくり近付いてくる。


海斗のひんやりした手のひらが、静かにあたしの前髪を掻き上げる。


「……か……海斗?」


あたしはとっさに目を閉じた。


心臓が止まるかと思った。

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