泣き顔にサヨナラのキス
 

身構えてずっと出入り口を気にしていた。


そのせいで、新聞なんて読める訳も無く、どの記事も頭には残らなかった。


「おはようございます」


待ち望んだ孝太の声に顔を上げる。


孝太はいつもと同じフワフワのダークブラウンの髪に柔らかい雰囲気のままで。


怒らせたなんて嘘みたいに想えてしまう。


なんでもないように、一言「おはよう」と言ってしまえば、全てが元通りで


「センパイ、お仕置きですからね」なんて小声で言ってくれそうな。



……そんな筈は無いのに。



< 262 / 614 >

この作品をシェア

pagetop