泣き顔にサヨナラのキス
  
 
孝太は丁寧にピーマンを除けているけど、それってメインのおかずが半分近く食べられないって事で。


いつもだったら、あたしのお皿にそのピーマンが乗っかって、別のおかずと物々交換になるんだろうけど、今日はそんな素振りも無い。


こんな些細な事でも、寂しくなってしまう。


「野上さ、食べるか、ため息吐くかどちらかにしろよ。あ、やっぱ、ため息禁止な、飯が不味くなる」


「す、すみません」


ため息なんて、無意識だった。


ご飯、不味くしちゃってごめんなさい。


聞こえるはずも無いけど、心の中で呟いた。



< 269 / 614 >

この作品をシェア

pagetop