泣き顔にサヨナラのキス
   


あぁ、もうこの空気堪えられない。


「お先です」と言い掛けた矢先、「お前たち、もしかして喧嘩してんの?」と原口係長に先を越されてしまった。


「いいえ」


間髪入れずに答えたのは孝太で。あたしはただ黙っていた。


「ふうん。あ、小林、この前、野上を俺の家に泊めたから」


原口係長は何でも無い事のように、お茶を啜りながらそう告げた。




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