泣き顔にサヨナラのキス


ふと脳裏に蘇る、梶間食堂でのランチ時の会話。


「でもこの前、山本さんの言葉に『まさか』って言ったよね」


そう言うと、バツが悪そうに俯いて「何となく、カッコつけただけ」と。


「本当に?」


「うん」


……なんだ、そんなことだったの。


小さな誤解や、スレ違いが積もり積もって爆発するところだった。

もっと早く素直になればよかった。本当の気持ちをぶつければよかった。


「バカみたいだね。あたし達。あたしも孝太に重いと想われたくなくて、言いたいことも、ずっと我慢してた」


瞬きをすると、涙がポロリと零れ落ちる。


「ヤダ、涙……」


そんな、泣き笑いのあたしを孝太は抱きしめて。


そして、キスをした。





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