泣き顔にサヨナラのキス


あたしが帰るのは孝太の部屋。連絡もせずに来てしまった。


こんな時間にびっくりするよね。でも、どうしても言わなくちゃ。


深呼吸してインターホンを鳴らす。しばらくして、ドアが音もなく開いた。


「カナ?どうした?」


目の前の孝太はお風呂上りだったみたい。


濡れた髪を首に掛けたタオルで軽く拭きながら、あたしを見て嬉しそうに笑った。


「急にびっくりしたよ。言ってくれれば駅まで迎えに行ったのに」


「タクシーで来たから」


「そっか。で、何?俺に逢いたくなったの?」


そんな事を照れながら言う孝太に胸が苦しくなる。





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