泣き顔にサヨナラのキス
    

ずっと、言えずにいたこと。

これを言ったら孝太に嫌われてしまうかもしれない。

それでも、これ以上隠し続けることなんて出来ないから。


「あのね、どうしても孝太に言わなくちゃいけないことがあるの」


孝太の目を見てゆっくりとそう告げると、孝太もあたしの雰囲気を察したのか、急に神妙な面持ちへと変わった。


孝太の薄茶色の大きな瞳。こんな間近で見詰めるのは、今日で最後になるかもしれない。


そう想うと、途端に涙が込み上げてきてしまう。


こんな時に泣くのはずるい。それを我慢するように息を飲み込んだ。



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