泣き顔にサヨナラのキス
「あたし、」
「言わなくていいよ」
あたしの言葉を遮るように、孝太が手を引いて部屋へと連れて行く。
靴を乱暴に脱ぎ捨てて孝太の後へと続いた。
「あの、孝太」
あたしの言葉を無視するように、ソファーに座らせると、飲み物を取りにキッチンへと消えた。
もしかして、孝太は気が付いていたの?
そして、知らないふりをしていたの?
両手にグラスを持って孝太が戻ってきた。
その様子は普段と変わりなく見えて。だからか、また孝太の瞳をじっと見詰めてしまった。