泣き顔にサヨナラのキス


「あたし、」

「言わなくていいよ」

あたしの言葉を遮るように、孝太が手を引いて部屋へと連れて行く。

靴を乱暴に脱ぎ捨てて孝太の後へと続いた。


「あの、孝太」

あたしの言葉を無視するように、ソファーに座らせると、飲み物を取りにキッチンへと消えた。


もしかして、孝太は気が付いていたの?


そして、知らないふりをしていたの?


両手にグラスを持って孝太が戻ってきた。


その様子は普段と変わりなく見えて。だからか、また孝太の瞳をじっと見詰めてしまった。




< 461 / 614 >

この作品をシェア

pagetop