泣き顔にサヨナラのキス


「カナ」名前を呼んで孝太が立ち止まる。


あたしの名前を呼ぶときの孝太の甘い声が好き。


「今から、指輪を買いに行こう」


――…ええっ?


「本当に?」

「うん」


孝太は前を向いたままで、あたしを見てくれない。


だけど。


孝太の温もりが掌から伝わって。あたしの心を優しく包んでいく。


途端に視界が歪んで何も見えなくなった。


……大好きだよ。


あたしは繋いだ手をギュッと握り返した。




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