泣き顔にサヨナラのキス


冷たい指を絡めて一つになる。何度目かのそれには、もう痛みなんて感じなくなった。


あるのは溶けてしまいそうな甘い刺激と少しの虚しさ。


原口係長の上で揺れるあたしを見詰める瞳に追い詰められて。


声にならない声が漏れた。


二人でゆっくりとベッドに倒れこんで荒い息を整えると、次第に頭の中がクリアになっていく。


身体が離れると心まで離れていくような錯覚。


最初から何一つ寄り添ってなんかいないのに。


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