泣き顔にサヨナラのキス
 

金曜日の夕方にそっと渡される部屋の鍵。

それは合鍵なんかじゃなくて、土曜日の朝には原口係長に返さなきゃならない。

その度に、あたしは彼女じゃないんだと、再認識してしまう。

こんな曖昧な関係から、恋人に昇格出来る可能性は何%ぐらい?


……なんて、考えるだけ無駄かもしれない。


ベッドの中で「好き」と言っても、いつもはぐらかされてしまう。

関係をはっきりさせようと強気に出れば、あっさりフラれてしまいそうで怖い。


身体も重ねていれば、気持ちもいつか重なるなんて。

自分の気持ちだけが重くて、何だか苦しい。



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