泣き顔にサヨナラのキス
原口係長の濡れた髪があたしの頬や首筋に触れると、自然と甘いため息が漏れた。
明日の予定を訊かなくちゃ。
一日一緒に居るのは無理でも、花火を二人で観に行きたい。
キスに夢中になりながら、頭の片隅でそんな事を考えていた。
「ごめん、無理だな」
その言葉の意味を受け止めるのに、少し時間が掛かってしまった。
「そ、そうですよね。急に言っても都合がありますよね」
期待していたわけじゃない。だけど、がっかりしている自分も居て。
それを認識してしまうと、今一緒に居る事が酷く辛くなってしまった。
「あ、あの。あたし、急にお腹痛くなっちゃって。今日は帰ります」
そう言って、バタバタと身支度を整えた。
「送っていく」と言った原口係長の声を無視して、スッピンのまま部屋を逃げるように飛び出した。