泣き顔にサヨナラのキス
「浴衣、すごく似合ってる。本当、可愛い」
田中君は照れたように笑って
「俺、山本さんが好きなんだ」と、よく通る声で言った。
――…えっ?
「あの、えっと」
「返事は要らない。ただ、言いたかっただけだし。他に好きな人が居るのもわかってる。……それって、原口係長でしょ?」
「なっ!?」驚くあたしに
「やっぱり……」と田中君はため息を漏らした。
少しの沈黙の後、何事も無かったかのように二人で歩いた。