泣き顔にサヨナラのキス
 

「もう、毎日楽しくて」

「よ、良かったね」

困惑している野上さんを無視して、あたしは話続けた。

「原口係長って、普段と違って二人きりになると、すごく情熱的なんです。
この前もですね……」

何気無く野上さんを見ると、真っ赤になってアタフタと手を振っている。

「ちょ、ちょっと山本さん、もしかして、もう酔ってる?」

梶間食堂での女子会は、友達が少ないあたしにとっては大切な楽しみの一つ。

「ふふっ。いいじゃないですか。久しぶりに野上さんとお酒を呑んでいるんですから」

「まぁ、そうだけど」

野上さんは相変わらず生ビールをジョッキで呑んでいて。丸顔にたれ目なところも全然変わらない。




< 612 / 614 >

この作品をシェア

pagetop