群青の月
思考が停止する程驚いてしまったあたしは、身動きが取れない。


目を見開いたまま固まっていると、冬夜の唇が耳元に寄せられた。


「もう、いいから……」


消えそうなくらいに微かな声でそっと囁かれた言葉に、更に目を大きく見開く。


「え……?」


「もう、何も言わなくていいよ……」


今度はハッキリとそう告げた冬夜が、あたしの体を強く抱き締める。


「で、でも……」


彼は戸惑うあたしから離れた後、泣き出しそうな笑みを浮かべた。


そして、首をゆっくりと横に振った。


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