群青の月

◆Side‥冬夜


【Side‥冬夜】



「……あのさ、さっきから何でそんなにご機嫌ななめなんだよ?」


アップテンポの邦楽が流れるレンタルショップの店内で、DVDケースを戻しながら隣にいる柚葉を見る。


すると、それをお前が訊くか、と言わんばかりの冷たい視線が返って来た。


その表情に、思わず肩を震わせてしまう程の笑いが込み上げて来る。


要するに…


柚葉は、さっき会った吉岡さんに俺が彼女の恋人として自己紹介をした事が、どうも気に食わなかったらしい。


“気に食わなかった”と言うよりも、たぶんただ恥ずかしかっただけなんだろうけど…。


< 745 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop