群青の月
「ただいま」


不意に耳に届いた声に顔を上げると、冬夜がネクタイを緩めながらリビングに入って来た。


予想以上に早い彼の帰宅に、思わず目を小さく見開いてしまう。


「あ、早いね……」


「うん。俺がいないと、柚葉が寂しいかと思ってさ」


どこか悪戯にフワリと笑みを零した冬夜に、眉を寄せながら微笑みを返す。


「自惚(ウヌボ)れ過ぎ……」


ぶっきらぼうなあたしにクッと笑った冬夜が、あまりにも楽しげに見えて…


あたしはそんな彼に釣られるように、小さく苦笑してしまった。


< 803 / 1,000 >

この作品をシェア

pagetop