Nostalgicな祭りのあとで
「・・今のやまじいにとって、あの桜は奥さんそのものなんよ。ご神木のある場所も、もう知る者が少なかろぅね。元は山本家の先祖のもんやして、亡くなった後はみんな遠慮して出入りを控えとったから。」

キヌは憂えて体を揺らした。

「もしかしてお婆ちゃんもやまじいが好きだったとか?」

覗きこんだ七菜の頭をさすって、柔らかく笑った。

「あん人は、ほんに奥さん好いとったけぇね。」

そして、ありがとうと言った。

「あの山はアタシらの思い出。次の子供達にもエエ思い出作ってほしいと願うとるんよ。」
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