ドラマチックスイートハート
スタンバイが完了し、撮影が始まった。
由奈はテーブルに置かれているオレンジジュースをストローで吸ってから、2人に語りかけた。
「んで聞いてよ~。せっかくコウとあの事件を調べているのに、どこも資料が無いんだよ? おかしくない?」
過去の20年分事件が綴ってあるという図書館に行って、当時の記事を調べてもその日の記事だけ抜き取られてたり、他の場所でも同様の現象が見られた。
犯人は中年男性と聞いていたが、せめて名前と顔くらい知りたい。
それを友人に話しても、何しろ5年前の事件だ。
名前など覚えていない。
男の友人はあまり聞いてないようで、パスタを食べるのに夢中だ。
「ふぅ~ん。インターネットでも調べたら?」
「私パソコンが苦手で……得意なコウに頼んでも、何故か検索に引っかからないって」
由奈はため息混じり、ストローに息を送りオレンジジュースをボコボコと鳴らした。
心配した女の友人は、由奈の状態を聞いてきた。
「でも……大丈夫なの? 事件思い出しちゃわない? 立ち向かうって言ってもさ……余計な事で心の傷広がったら、元も子もないよ?」
そう心配されるのは当たり前。
だけど、由奈の決心は揺らぐものではなかった