偽りの人魚姫
俺は中学時代のよっさんを知ってる。

中学の時、散々ぶつかった。

俺もガキだったし。

散々ぶつかって、喧嘩しまくったら、いつのまにか、俺はよっさんの唯一の理解者。

俺はよっさんの手によって、ほんの少し大人になった。

まだまだ、よっさんの考えには付いていけないけどね。

元が人より、ガキだから。

高校に上がった今、よっさんは、俺と話す時だけ、正しいよっさんになる。

べつに、いつも正しいよっさんでいても、いいと思うんだけど。

「そういや、お前、5限に俺の名前出しただろ。」

「あぁ、出した。情報早くね?」

「やめろよ、俺の名前出すの。ってか、教科書くらい用意してから来い。」

「忘れちゃうんだよ。」

「お前が、俺の名前を出す度びに、6組に入りづらくなんだよ。」

「なんで。」

「クラスのやつらが変な目で見てくる。分かってるくせに、言わすな。」

「ははは。」

「ははは、じゃねぇよ。お前、クラスのやつに何言ってんの。」

「秘密。」

よっさんが、睨んでくるけど、歌詞用のノートを取り出しながら、気づかないフリ。

「あ、ねぇ、よっさんさぁ、モリノって知ってる?」

「あぁ、あの喋れないやつだろ。1年の時クラス一緒だったけど、なんで?」

「しゃべったことある?」

「はぁ?しゃべれないんだろ?」

「じゃぁ、話しかけたことある?」

「そりゃ、1年間一緒だったら、あるだろ。」

「どうだった?」

「別に、普通だったけど。どうしたんだよ、いきなり。」

「いや、今、モリノとクラス一緒なんだけどさぁ、あまりにも笑わないから、なんかなぁって。」

「あぁ、確かに笑わないな。」

「でしょ。何がつまんないんでしょうか。」

「別につまんないから笑わないとは限らなくね?笑う必要を感じてないだけとか。」

「俺が、教室わかせてんのに。」

「それは、お前、うぬぼれってやつだ。」

「ひどっ。」

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