ななちゃん

母の章


「ななは治るのですか?」
何度この質問を繰り返したであろうか。
私は、医者に尋ねる。
K医師という有名な医者だ。
40過ぎの医師は、若さこそはないもののその顔は自信に溢れており、とても頼りになる印象の持ち主だ。

K医師は困ったように、はにかんだ。
「奥さん、辛いかも知れませんが」
医師は、私の目をまっすぐみている。私は、この医師なら、必ずななを治してくれると信じている。
「私のことはいいですわ。ななは、ななは、治るのですか?」
小さく息をつき、K医師は私に告げる、
「奥さん、もしよろしければ…」
「私に心理療法や、精神分析は不必要です」
「ですが…、では薬を。最近よく寝れてないのではありませんか?」
「必要ありません。また来週来ます。」
私はそう医師に伝え。診察室を後にした。
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