先生と生徒
「…酒井、自分の世界に入るなよ…」
「好き」
外から聞こえる野球部の声も。
ブラスバンド部から聞こえる音楽の音色も。
そよ風の音さえも消えて、教室には何も聞こえない。
全てが止まった瞬間だった。
「………稲原は?」
「…、別れました」
「…そうか。
酒井、その気持ちは…」
「嘘はないです」
「…気持ちは嬉しいがな、俺には佐知子も居て、翔もいる。
どんなに頑張ってもこの指輪が抜けることは、ない」
と、左手の指輪を指した。
「…分かってます」
「それでも、好きって言うのか?」
「……はい」
先生の目を真っ直ぐと見た。