無邪気な欲望



素っ頓狂な声を上げて、雑賀先輩がまじまじと私を見つめた。



「わり。もっかい言って?」



「だ、だから! 寝ちゃったんです!! ここで寝転がってたら急に眠たくなっちゃって……」



「――――で、今まで寝てたと」



「……はい」



なんとなく情けない気分になって、先輩の視線から逃れるようにうつむく。



「目が覚めて、急いで教室に戻ろうとしたけど、声が聞こえたから思わず隠れちゃったんです……」



下を向いて言い訳していると、どんどんいたたまれない気持ちになっていく。


先輩の反応がわからないからなおさらだ。


後ろめたい気持ちも手伝って、さらに言い逃れは加速していく。



「だから、授業サボったワケじゃないです。うっかり寝ちゃってそれで――痛ッ!!」



たらたらと弁解している途中で、いきなり雑賀先輩からでこピンをお見舞いされた。


びっくりして顔を上げると……。
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