白銀の女神 紅の王Ⅱ
「ハッ…女ひとり守れない男に敬意なんて払えるか」
ジェスの言葉に俺とウィルがピクリと反応する。
デュークだけは一人ククッと笑って口を開く。
「全くだな。しかも婚儀の日に花嫁を攫われるなど間抜けにも程があるぞ」
「デューク!貴方まで」
デュークの言葉に反論するよりも前にウィルが諌める。
ウィルとデュークのやり取りを見たジェスはそれまでの挑発的な視線から一転、眉を寄せた。
「やっぱりエレナがいなくなったのか」
溜息を零すようにポツリと呟かれた言葉。
「やっぱりとはどういうことだ」
伏せた瞳に陰りがあったことに何故か苛立ちを感じる。
その瞳に映ったのは紛れもない落胆の色だった。
エレナが危機にさらされていることを心配しているのだろうが、コイツにエレナを心配する資格などない。
「俺に何か伝えることがあって来たのだろう。回りくどい言い方をせずにさっさと言え」
苛立ちのままに口にすれば、ジェスはフッと憐れみを含んだ笑みを見せる。
「その嫌味なまでの余裕は相変わらずだな。胸中は焦りまくってるくせに」
見透かした気で口にする言葉が気に障る。
「何のことだ」
「しらばっくれる気かよ。まぁいい、俺だってエレナには借りがある。俺はその借りを今返すだけだ」
ニヤニヤとした笑顔から一転して、表情が和らぐ。
ジェスは未だに自分が国外追放にならずに、労役だけで済んだのはエレナのおかげだと思っている。
その借りをずっと返したいと思っていたのだろう。
そうでなければ、気に入らない相手にこうして情報を提供したりしない男だ。