LOVE*PANIC
別に、笑顔を見せる必要がないわけではない。
本来なら、この世界の先輩でもあり、立場も上に修二には常に笑顔を向けるべきだ。
だが、一歌の顔には笑顔が浮かばなかった。
「じゃあ、必然だ。俺達がもう一度会うのは、必然だったんだよ」
一歌は修二の言葉に感情を感じることが出来なかった。
ただ、思い付いた台詞を並べているだけに過ぎないように思えるのだ。
これで、本当に俳優なのかと疑いたくなるほどだ。
「何のつもりなんですか?」
一歌は修二の言葉にも、その言い方にも苛つき、眉をしかめた。
修二の意図が全く見えないからだ。
「だから、この間言ったじゃん。俺と大恋愛してみない、て」
修二は表情を変えないまま、そう言った。
一歌は、修二の意図が全く読めずに、あからさまに顔をしかめた。
「遠慮しておきます」
そして、顔を背けながら、それだけ返した。
出来れば相手にしたくない、という態度のつもりだったのだが、修二は気にしていないのか、それとも気付いていてわざとやっているのか、言葉を続けた。
「君にとっては、いい提案じゃないの?」
一歌は修二の言葉の意味が分からないので、取り敢えず無視を続けた。
すると、修二は自分の顔を一歌の耳元に近付け、囁くようにこう言った。
「売れるチャンス」
修二の言葉にか、それとも独特の甘い低音にか、一歌の心臓は大きく鳴った。
売れるチャンス。
一歌は思わず、修二の顔を見た。
すぐ間近に、整った甘いマスクがある。
一歌が今、一番欲しいもの。
目の前にいる男は、それを自分に与えられる、と言っているのだ。