LOVE*PANIC




アルコール独特の感覚が喉を滑り落ちていくその時、ねえ、という声が一歌の耳に届いた。


一歌はグラスを口から話し、声のした方に顔を向けた。


そこにいたのは、なんと修二だった。


何故、修二がここに、と一歌は首を傾げたが、すぐに、ああ、と思った。



竣平が売れるきっかけとなったのは、修二主演の映画の主題歌だったのだ。


一歌は修二の顔を見て、その記憶を脳の隅から引っ張り出した。


だから、彼がここにいるのはなんら不思議はない。


薄暗い中でも、修二の顔はよく整っているのが分かる。


修二はすました顔で一歌の隣に並んだ。


「竣平君の知り合いなの?」


修二は癖のある甘い声で一歌に尋ねた。


「……事務所の後輩なんです」


「え? 何?」


一歌の声が小さかった為か、それとも会場が賑やかだからか、一歌の声ははっきりとは修二には届かなかった。


「事務所の、後輩なんです」


一歌は先程より、うんと大きい声を出した。


「ああ成る程ね」


今度はきちんと聞こえたらしく、修二は一人で納得したように頷いた。


そして、ゆっくりと一歌に笑顔を向けた。


「でも、こんなところで逢えるなんて、運命だね」


一歌の中の修二は、そんなににこやかなタイプではないので、その笑顔に多少の違和感を覚えた。


「ただの偶然です。共通の知り合いがいるなら、有り得ない事じゃありません」


一歌は修二とは反対に、にこりともせずに答えた。








< 32 / 109 >

この作品をシェア

pagetop