LOVE*PANIC



自分の気持ちに気付いてしまうと、一気に蝕まれていく。


もう手には追えないし、気付かない振りをして、再度蓋をすることも不可能だ。


急速に進行し、手遅れな状態になる。


それが、恋の病というものだ。


一歌はそこまで考えてから、深い溜め息をついた。


一歌だって、今まで幾つか恋はしてきたし、色々な恋の歌だって、歌ってきた。


だが、こんなふうに、心を占拠されてしまう程に恋い焦がれるのは初めてだった。


何をしていても、修二のことが気になる。


今、何をしているのだろう。


今、誰と笑い合っているのだろう。


頭のほんの隅でもいいから、自分の存在はあるのだろうか。


一歌はベタなラブソングの歌詞のようなことばかりを考えていた。


相手も芸能人だからだろうか、特に修二の場合は一日過ごしていて、姿を目にしない日はなかった。


一日中テレビを見ていれば、何本もCMを見るし、コンビニでも本屋でも、修二が表紙の雑誌がある。


だから、頭から離れなくなるのだ。


一歌はまた溜め息をつきながら、いや、違う、と思った。


例えそうでなくとも、考えてしまうのだ。


あの眼差しが、あの甘い低音が、一歌から離れない。


知らぬ間に、絡み付いているのだ。


なんて、歌詞的に表現をしてみたが、何てことはなく、ただの恋患いだ。


恋愛の初期症状が、一歌を苦しめていた。


一歌は何度目か分からない溜め息をついた。


売れるまで恋愛はしない、と誓っていたはずが、いとも容易く恋に落ちた。


いや、別に誓っていたわけではなく、ただ、出来ればしないようにしようと思っていただけだ。


相手が修二では仕方ない。



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