LOVE*PANIC
ドラマを視る人、皆が皆、そうだとは限らないが、気にするかしないか、どちらかしかいない。
だとしたら、気にする人に合わせるべきなのだろう。
気にしない人はしないのだから、合わせる必要はない。
一歌はドラマのプロデューサーに挨拶をしてから、渡された脚本を読んでみた。
脚本を読んだ一歌の感想は、自分には女優は無理、ということだ。
ト書きにされた状況に、ぽん、と書かれた台詞。
俳優や女優は、それだけで芝居をしているのだ。
そこでまた一歌は修二を尊敬した。
今まで、何度か修二のドラマは観たことがあったが、彼の芝居を特別上手いとも、下手だとも感じたことはなかった。
だが、つい最近、海外で賞を獲ったところを見ると、どうやら上手いらしい。
それ以前に、こんな脚本のみで芝居をしてしまう時点ですごいと思えた。
一歌は三話分を一気に読み終えてから、静かに脚本を閉じた。
ドラマの内容は、恋愛を絡めた刑事もの。
とにかく修二がかっこいいドラマになるだろう、と想像が出来た。
内容も面白いほうだ。
だが、一歌の頭の中に、このドラマに合う歌詞は浮かばなかった。
一歌は、先程渡された曲を何度も聴いてみた。
ドラマの開始まで、そんなに時間はない。
それに、修二が主演のドラマだということも手伝い、一歌の中の焦りは増すはかりだ。
何の経緯でから知らないが、折角修二が自分に主題歌を、と選んでくれたのだ。
だからこそ、そんな彼に恥じないような歌詞にしたい、と強く思っていた。
そこで、一歌ははたと気付いた。
何の経緯で、自分を選んだのだろう。
たまたま、なのだろうか。
たまたま、あの場所で自分と出会したから。