LOVE*PANIC



「それに、最初からすぐに、話を持ち出すきっかけに過ぎない、て白状するつもりだったし」


でも、すぐに言わなかったのは、一歌がいつまでもその話に乗らなかったからだろう。


修二的には、すぐに話に食い付くか、最初から誘いに乗ると思ったのだ。


修二程の人なら、そう思っていても、決して嫌味にはならない。


一歌はそう思いながら、修二の横顔を眺めた。


「それに、いっちゃんが歌ってるのを初めて生で見た時……あ、初めて会った日、スタジオにいたんだ」


修二の言葉に一歌は驚いた。


あの歌番組のスタジオに修二がいたなんて、全く気付いていなかった。


「いたんですかっ?」


一歌は思わず大きな声を出した。


「うん。
で、その時に、いっちゃんが歌ってる姿を見て、ああ、この子、諦めてるな、て思ったし、何よりプロ意識がないと思った」


図星だった。


修二の言葉は、全てついこの間までの一歌に当てはまっていた。


一歌は「売れたい」と思う反面、「もう限界」だと思っていたのだ。


「折角、才能があるのに勿体ないと思ったから、少しの間、振り回させてもらったんだ」


確かに、修二に振り回させれ、一歌の意識は確実に変わった。


出来る限り頑張ってみようと思えるようになったし、何よりも見えていなかった大切なものが見えるようになった。


「だから、そんなわけなんだけど、色々とごめんね?」


修二がようやく、一歌の顔を見た。


信号はもうすぐ青に変わる。


「……いいえ」


一歌は小さな声で答えた。


結果的に、修二は一歌に謝る必要はない。


修二の行動は、全て一歌にとって為になることだったし、修二を好きになったのも一歌の勝手だ。



< 99 / 109 >

この作品をシェア

pagetop