月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「礼、今日の天名式は取り止めます。」
礼が怪訝な顔をした。
昨日から、朱雀は礼と呼んでいる。
天名式は、礼の名を改めるものである。
同時に年号も改名される。
すでに、二人で名前は決めてあった。
それを中止するほどのことが起こっているのだろうか。
ずっと延び延びになっていたものだ。
あと一日二日延びたところで、何ともない。
歩きながら、朱雀は説明した。
朱雀が楊震という名を口にした時、どこかで聞いた名だと思った。
はて、どこだったか。
礼が入殿し着座すると、見知らぬ者が入ってきた。
顔色が悪い。
ふらつきながら、跪いた。
「礼、挨拶の許しを。」
朱雀の言葉に、礼は頷いた。
朱雀は玉座の横に立っている。
いつも一人だった朝議が、二人になるとまた違って見える。
「面を挙げよ。」