穢れなき獣の涙
 船長だろうか、羽根飾りのついた帽子を被り、硬い黒髪に浅黒い肌と赤茶色の瞳には自信が窺える。

 海の男ならではの風貌だ。

「大陸を渡りたい。予定はあるか」

 その問いかけに男はピクリと反応し、シレアを下から上まで見定めるように眺めた。

「三日後に出航予定だ。三人か?」

「そうだ」

「いくら払う」

「金貨十枚」

 青年の言葉に男は鼻を鳴らした。

「三人でか? 随分と値切るじゃないか」

「魔法が使える。航海の助けになると思うがね」

 男の片眉が吊りあがった。
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