穢れなき獣の涙

*冬の心


 ──明け方

[いずこかで会おうぞ]

 ヴァラオムは記憶に刻み込むように三人の顔を見やると、朝焼けの空に飛び立った。

「本当にお喋りなドラゴンじゃったわい」

「まさか夜通しになるとは」

 二人はぐったりしながらも旅の用意を進める。

「いつもより長かった」

「そうなのか」

 よほど楽しかったのだろうと、シレアは転がっている幾つもの空瓶を眺めた。

 ロデュウについては、少なからず思うところがあるのかもしれない。

 共に、古き種族であり、ヴァラオムは智の竜では若い方だがその滅びを見てきた。

「例えドラゴンであろうと、我らの滅びは止められはしなかったよ」

 古の民はこの世の役目を終えた種族だ。

 今更、誰かを憎んだところで何が変わるというのか。
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