穢れなき獣の涙
「どういうことだ!?」

 レイノムスは突然の襲撃に目を丸くして自らも剣を握った。

 未だ城までは遠く、数十匹というガーゴイルの群れは執拗に評議長に牙を剥く。

「レイノムス様!」

 セルナクスとマノサクスはガーゴイルを薙ぎ払いながら評議長に駆け寄る。

 シレアはふと、

「この気は?」

 混在する気の流れの中に、一つだけ他とは一線を画す気配を感じて立ち止まる。

「シレア!?」

 動きをとめ、どこかに歩いて行くシレアに声を掛けるも、聞こえないのかその背中は遠のいていった。

 気を辿っていくと、ガーゴイルの群れから少し離れた所にある、雑木林の前に大きな影が見えた。

[グアオ!]

 現れたシレアに驚いたのか、その影は大きく吠える。

 羽毛の生えたドラゴンとでも言うのだろうか。

 二メートルほどの飛竜は、赤や青の鮮やかな体の背に、鋭い目の女を乗せていた。
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