穢れなき獣の涙
「おぬしの助けとなる仲間を見つける事こそが、わしの役目なのだから」

 わしは、おぬしを大いなる運命に導く者だ。

「つまり、私は何かに巻き込まれるということか」

「燃えさかる炎の中心におぬしがいる。運命の仲間とおぬしが出会う事で、その者には何らかの不都合があるのやもしれぬ」

「その仲間とやらは解らないのか」

「まだはっきりとは見えぬ。おそらく旅をする事で鮮明になってゆくだろう」

 小さく首を振り、長らく住んでいた森を見回した。

「聖なる地にバシラオが踏み込んだ事で、異変がさらに増大していると知った。しばし待て、わしも旅の準備をする」

 そう言って家の中に入っていくユラウスの背中を見つめる。

 自分が何者なのかを探る旅が思わぬ方向に進んでいる。逆らえないほどの大きな流れに囚われたらしい。

 シレアは苦い表情を浮かべ、木々の間から覗く空を見上げた。




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