ハチに腕を引っ張られ、その場で引き止められてしまった

「何?」
私は少しいらだちながらそう言うと
ハチはさらにちから強く私を引っ張った


きっとあの時の夕陽を浴びた私たちの影はひとつになっていたんだろう


重なった唇から…聞こえた音

チュ…



私は思い切り目をあけ、状況を頭のなかで再確認した


今…私…

キス…

ハチ・・・と



我に戻った私の前には、怖い顔をするハチの目がある


ドン―

とっさに私はハチを押し離した


「何・・・すん…の」
私は口に服を当て、ふき取るようにゴシゴシと口を拭く

ハチを見ると、何も言わずただ私をじっと見ている

「…何?なんなの?」

「・・・何もない。」

ハチはそれだけ言って、自分の家へと走って行った
私は少しの間そこで立ちすくみ、キスのことを何度も思い出していた

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