鳴神の娘

私を抱き上げてる腕に、ほんの少し力がこもった気がした。


「鳴る神の姫。貴女のおかげで、我が軍に死者は出なかった。どんなに礼を言っても足りないくらいだ」


「それは、どうも」


私は何もしてないので、それだけ言うとみんな固まってしまった。

ん?


「なんと謙虚な・・・やはり鳴る神の娘御に違いありませぬ」


おじいちゃんの一人が泣いてしまった。

ごめんね、泣かせる気は無かったんだけど・・・。


というか、今更だけどナルカミの姫って何?

恥ずかしすぎる。


そもそもここはどこ?


戦争なんて日本はしてないはずなのに。


でも日本語は通じている。


顔も・・・無駄に美形が多いけど、日本人ぽい。


黒っぽい髪の人も多いし。


「あのう、ここがどこなのか教えてもらっても?」


すると、男の人が頷き机の上の、大きな地図を示した。


「ここがラズニヤ・・・そしてこちらがブローナ。我が軍はちょうどこの国境あたりにいます」


今、なんていったの。


「和平の為に今ラズニヤへ使者を立てています。終われば、ブローナの王宮へ連れて行きます」


おうきゅう?
王宮?


私の動揺を、この人達は別の意味で受け取ったらしい。


「ご安心を、鳴る神の姫。姫君は王宮にて、きちんとおもてなし致します」


「幸い我らが陛下にはまだ正室どころか側室も居りません」


「王宮への凱旋にお召しになる衣装も、和平がなった後ご用意いたします」


聞いてるうちに有り得ない考えに至ってしまって、気づけばポロポロと涙が溢れていた。

まさかまさかまさか。


「姫? どうしたのです」


ここ、私の知らない場所なの?

私知らないところへ連れて行かれるの?

嘘でしょ。


こんなの、嘘だ。




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